なんとなく、歯が痛い気がする。
奥歯の方に痛みがある。
「虫歯かも!」
「歯周病かも!」
「歯の病気かも!」
と思い、歯科医院に行くと「異常なし」と言われる。
それでも「痛いもんは痛い」と耳鼻科などの紹介状をもらう。
「痛いのは歯なのに・・・」です。
というわけで、今回は歯の周りの痛みと筋膜の関係性を解説します。
歯の周りの痛みと筋膜の関係性についての解説
筋膜の性質については前回こちらの記事で解説しましたので、まだご覧になっていない方はこちらからどうぞ。
2018年11月に行われた「歯スティバル」をきっかけに僕自身も歯科関係の方とお話させていただくことも多くなりました。
その中で、歯痛を訴えて歯科医院を受診するが、その痛みが筋膜の異常に起因する痛みであるため、歯科としては治療することがないという患者さんが一定数いるというお話をうかがいました。
これってつまりどういうことかというと、「歯が痛い」と思っていたけど、歯科医院では「歯科」の領域ではどこも異常は見られないから治療することもありませんよ。ただ、筋膜になんらかの異常をきたして、痛みを感じているという状態です。
筋膜に関しては以前、筋膜についてまとめた記事がありますので、そちらを参考にしてください。
以前の記事で説明・解説した通り、筋膜というのは身体全身を覆う組織であり、筋膜を介して隣り合った器官が繋がっています。
つまり、筋膜というのは身体の離れた部位同士をつなぐ組織でもあるわけです。
その筋膜がなんらかの形で痛みを誘発しているとしたら、痛みがある箇所から離れた部位の筋膜に異常があることも考えられませんか?
ここでは、その筋膜を介したつながりを「筋膜の流れ」「筋膜のつながり」と表現することにします。
さて、今回は筋膜から起因して歯、またはその周辺部位に影響を及ぼす筋膜のつながりというのを「Anatomy Trains®」を参考にしながら紹介します。
以前の記事でも解説しましたが、筋膜が起因となって痛みを感じる場合は症状のない部位に身体的原因があることも少なくありません。
今回の記事のテーマである顎、歯の周囲にも筋膜はあります。
つまり、全く関係ない身体の部位が歯や顎の痛みを起こしていることがあるのです。
さて、その歯や顎の周り、そして頭部を覆う筋膜ですが、頭から、頚部、背部、足部へとつながっています。
簡単に言うと、頭部や口腔周囲の筋肉およびその他の組織が筋膜を介して、全身に繋がっているわけです。
筋膜の流れについて
口腔、頭部、頭蓋部、頚部というのはいくつもの筋膜のつながりが交わる部位でもあります。
今回は数ある筋膜のつながりの中から「3つ」ご紹介します。
頭部、頚部に直接関係していそうなものは、Anatomy train®を参考にして作成した図を用いて以下に紹介します。
スーパーフィシャル・フロント・ライン(SFL)とは?
スーパーフィシャル・フロント・ライン(SFL)は足の甲から身体前面を通って胸骨上部まで接続し、頭蓋側面を剃って頭蓋後面まで達する各筋肉が筋膜によって繋がっています。
この図のように頭部、頚部を見ると、
- 胸部
- 鎖骨
- 胸鎖乳突筋
- 乳様突起
- 帽状腱膜
- 反対側の乳様突起
と筋膜のつながりがあります。
例えば、
臨床ではSFL上の赤い丸(●)部分に痛みが出たとします。乳様突起周囲の痛みなので、下顎の痛みと感じる人もいるでしょう。
もし、これが筋膜のつながりによって引き起こされた痛みだったとしたら、*の部分の筋膜の異常により●の部分に痛みを感じているということもあり得るのです。
その場合、●の部分ではなく*部分への筋膜を含む軟部組織への介入が痛みの軽減に有効となるでしょう。
つまり、通常の歯科治療とは異なる介入になると想像できます。
このことを踏まえて、次にスパイラル・ライン(SPL)と呼ばれる筋膜のつながりを紹介しましょう。
スパイラル・ライン(SPL)とは?
スパイラル・ライン(SPL)は頭蓋側面から、頚部を通り、螺旋状に反対側の肩と肋骨を走行し、腹部を横切るように再び同側の骨盤の前面に戻ってくる。そのまま下半身を通り、再び頭蓋に戻ってくるつながりがあります。
SPLにおける頭部、頚部を見ると
- 頭蓋側部
- 上部胸椎
- 反対側の胸郭肩甲帯
- 同側の腹部前面
- 骨盤前面
- 下肢
と筋膜のつながりがあります。
これも先ほどのSFLと同様に赤い●の部分に痛みが出た時、頭蓋側部の痛みを下顎や顎関節の痛みと感じる人も、*の部分の筋膜の異常により●の部分の痛みを感じることもあり得るわけです。
この筋膜の異常というのは全身どこにでも起こり得るので、この図を例にすると背中や脇の下辺りの筋膜により口腔周囲の痛みが起こり得ることがわかると思います。
ディープ・フロント・ライン(DFL)とは?
ディープ・フロント・ライン(DFL)は、体の中心を通る筋膜の流れであり、足底から下半身の内側を走行し、股関節、骨盤、腰椎の前面を経由し、横隔膜の起始部から二手に分かれる。
- そのまま脊柱の前面を通って、下顎骨と頭蓋底までを繋ぐ走行。
- 横隔膜の起始部から胸部内蔵を通過し、胸郭を上部へ走行し、頭蓋底までつながります。
頭蓋、頚部、口腔周囲においてDFLはとても複雑に走行しており、筋膜のつながりに含まれる筋肉群は、
- 肩甲舌骨筋
- 胸骨舌骨筋
- オトガイ舌骨筋
- 舌骨下筋
- 内側翼突筋
- 顎二腹筋
- 茎突舌骨筋
- 咬筋
- 側頭筋
です。
DFL上の赤い丸(●)部分に痛みが出たとします。乳様突起周囲、咬筋、側頭筋周囲の痛みなので、下顎の痛みや歯の痛みと感じる人もいるでしょう。
もし、これが筋膜のつながりによって引き起こされた痛みだったとしたら、*の部分の筋膜の異常により●の部分に痛みを感じているということもあり得るのです。
その場合は、やはり●の部分ではなく*部分への筋膜を含む軟部組織への介入が痛みの軽減に有効となるでしょう。
まとめ
これらの筋膜のつながりが何を指しているのかというと、痛みがある場所に必ずしも身体的原因があるとは限らないということです。
これまで挙げた筋膜を起因とした痛みの出方はほんの一例ですし、
必ずしも当てはまるわけではありませんが、
筋膜は生体力学においてのエネルギーの伝達にとても重要な役割をしています。
つまり、顎(例えば咬筋)や頭(例えば側頭筋)に向かってエネルギーが伝達される、または頭部、頚部からエネルギーが身体の他の部位に伝達される場合も筋膜を介すると考えることができます。
では、エネルギーの伝達がうまくいかなかった場合どうなるか…身体の他部位において代償するという形で動作や行為を補完することになるでしょう。
代償的にエネルギーの伝達、動作の補完が行われるということは、その分身体のどこかに負担がかかっているということです。
その負担が「痛み」「違和感」「しびれ」などの症状として身体に現れてくることがあります。
その症状が口腔周囲で起きると、どうでしょう?
口腔周囲の痛みに対しての姿勢
冒頭のなんとなく、歯が痛い気がする。
奥歯の方に痛みがある。
「虫歯かも!」
「歯周病かも!」
と思い、歯科医院に足を運ぶ方がいるのです。
もちろん、歯科医院で原因は判明すれば、それに越したことはないのですが、
「歯科としては異常なし」と言われることもあるでしょう。
しかし、痛みというのは身体からの逃避のサインです。
「歯が痛い」でも、歯科医院で異常がないと言われたとしても、
身体の他の部位に痛みの原因があるかもしれないのです。
もし、その口腔周囲の症状が筋膜の異常から起因する痛みである場合、
施術家、カイロプラクター、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、アスレティックトレーナー、ロルファー、ボディワーカーの中には筋膜について専門知識、技術を有している人もいます。
そういった専門家を見つけ、相談することで問題が解決するかもしれません。
パーソナルセッションにおける筋膜への取り組み
SyncBodyのパーソナルセッションでは先述の筋膜のつながりを含めて、あなたの身体に何が起きて、何を必要としているのかにとことん向き合います。
パーソナルセッションで得た情報やエクササイズ方法をご自身でもご自宅などで実践することでより、より高い効果を得ることができます。
今まで、体が疲れやすい、マッサージや整体を受けても慢性痛が良くならない(すぐに元に戻ってしまう)方には、パーソナルセッションがオススメです。
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